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置き去りにしてきた過去 2

私の人生

置き去りにしてきた過去 2

しかし、今、父への憎しみは全くといいほど感じられなくなった。
長い年月がかかったけれど、私は、やっとその頃の父を許せた気がする。

父は可哀相だった。

父は、十何番目かの子供として大家族に生まれた。
そして、父の家は、近所に住んでいる心を病んだ人によって3回も放火され、その度に全焼し、極度の貧乏になり、学校に行くどころか、子供の頃から働きに行かせられた。

さらに、父親があるだけのお金をすべて酒に注ぎ込むような人で、いつまでたっても父の家は貧乏のままだった。
父は、ほとんど親に甘えたことも、認めてもらったこともなかったのだろう。

父は、親から何の財産ももらったわけでもなく、母と一緒になって高い土地に一軒家を建てた。
そして、家のローンを払い続けるために、家族を養うために、夜遅くなるまでへとへとになるまで働いた。
朝から夕方までと、夕方から夜遅くなるまで、1日に2つの仕事を掛け持ちして働いていたこともある。

父は、親に甘えた記憶がほとんどないばかりか、貧乏な子供時代に他人から蔑まれた経験と自分の学歴の低かったことが根強く劣等感としてあった。
だから、父が生きるのを支えてきたのは、世間への憎しみと敵意だったのかもしれない。

でも、そんな父でもいきなり子供にたくさんのおもちゃや、読みきれないほどの本を買ってきてくれることがあった。

私が幼稚園に通う時には、いつも自転車やバイクの後ろに乗せていってくれた。
その時の父の背中につかまって、風を切っていく時の爽快な感じが、今も記憶に鮮明に残っている。

それは、不器用なものだったかもしれないけれど、それでもそれは、こういう父の、子供への精一杯の愛情ではなかっただろうか。
そして、こういう父がいなければ、今の私は存在していない。

今私は思う。
父と私は実は直接関係なかったのだと。

父は、父自身への加害者であると同時に、自分自身からの被害者であり、私も、自分自身への加害者であると同時に、自分自身からの被害者だったのだ。

人間は自分自身を直接傷つけることができるのは、自分自身しかいない。
お互いに自分自身を苦しめ、自分で自分を生き辛くさせていただけなのだと。

今思うと、この長く苦しかった経験は、自分にたくさんのことを教えてくれた。
人間はなぜ生き辛くなっていくのかとか、なぜ不幸になっていくのかを。

そうであるなら、きっと今私は、この経験から汲み取れるものはたくさんある。
なぜ人間は自分を愛し前向きにいきいきと生きていくことができるのかとか、なぜ人間は幸せに生きていけるのかとかをだ。
だからそれは、実は得難い経験だったのではないかと今思っている。

父には、この前久し振りに電話をした。
今父は老人ホームにいて、周りに友達や仲間がいてとても元気そうだった。
反対に私の心配をしてくれた。

やっと今、自分の過去の一つを許せる気がする。

私は今、自分が置き去りにしたままの過去の一つ一つに現在の自分から架け橋を架けようとしている。
今の自分なら過去苦しんできた自分に対して癒してあげることも、その時の出来事の捉え方や解釈を変えてあげられる気がする。

そして、置き去りにしてきた過去の一つ一つに架け橋を架けてあげるたびに、不思議なことに今の自分の中に力が芽生えつつある気がする。
それは、初めからもともとからあった自分自身が次第に蘇ってくる感じだ。
きっとそれは、今まで自分の中で分裂していたものが統合され一緒になり、さらに大きな力となっていくからだと思う。

そして、それがきっと人間が成長していくことなのだと、今私は勝手に思っている。

(2009年9月28日のブログより)

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