愛された記憶

まだ幼い日のことを私は思い出し始めていた。

夕暮れ、庭にある柿の木と胡桃の木の間で私は、母に背におぶってもらっていた。
母は子守唄を歌いながら後ろにそっと手をやって私の背中を軽く叩き、あやしていた。
その時の、母のあたたかなぬくもりに包まれながら、心から安心した気持ちでいた自分を思い出した。

眠る時、母は足先まで布団をかけてくれ、冷たい空気が入ってこないように肩を出さないようにしてくれた。
そして、そっと頭を撫でながら、私をやさしく寝かせてくれた。

母は私をずっと母乳で育てようとしたらしい。
私は母の乳が腫れるくらい強く吸った時もあったらしい。

母は毎日おしめを取り替えてくれ、顔や体を拭いてくれ、服を着せてくれた。
お風呂に入れてくれ、足指の間や耳の裏まで痛いぐらいに洗ってくれた。

母は毎日朝早くからおれたち家族のために食事を作り、幼い私に食べさせてくれ、そして、家族みんなの食器を洗い続けてきたのだ。

夜遅くまで家族の服にアイロンをかけたり、裁縫をしている母の姿が鮮やかに目に焼き付いている。

母は童謡が好きだった。
いつも家事をしながらよく歌っていたその声を、今もはっきりと覚えている。

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